踏み込みと引き戻し~サイクルで考える後肢の動き~

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馬術をしているとよく聞くことになる”踏み込み”を、後肢の動きのサイクルの一部として考える話をしたいと思います。

まずは速歩での右後肢の接地の瞬間(一枚目)、それに続く、地面から離れる直前(二枚目)、の写真を円内の大腿筋膜張筋に注目しながら見てみてください
※大腿筋膜張筋:股関節の屈曲、膝関節の伸展に作用

・右後肢が踏み込むときに大腿筋膜張筋は収縮

・引き戻すときに適度に弛緩

 後肢の動きのサイクル

聞き慣れないかもしれませんが、踏み込んで着地した後に後方へ後肢を動かす動作を、引き戻し、と言います。

見ての通り大腿筋膜張筋は右後肢が踏み込むときに収縮し、引き戻すときに弛緩しています。

見た目に分かりやすいのでこの筋肉をハイライトしましたが、例えばお尻にある臀筋は逆に踏み込むときに弛緩し、引き戻すときに収縮しています。

各筋肉が各々のタイミングで収縮・弛緩(しっかりと言うと求心性収縮,遠心性収縮etc.ですがこうしておきます)を切り替えながら、踏み込む→引き戻す→地面を離れる→踏み込む、というサイクルを作っている訳です。


踏み込んで着地したあとにしっかりと引き戻す動きをすることで推進力が生まれます。写真の馬の動きはまだまだ小さいですが、活発に動いている馬をみると引き戻しの動きも大きいことがよくわかると思います。


ここからは後肢の動きのサイクルを妨げないように人が考慮すべき要素、時間の要素と空間の要素の二つの話をします

 時間の要素

踏み込む→引き戻す→地面から離れる、その間の地面に接地している時間を接地時間と言います。

接地時間は、移動速度が速くなるほど短くなっていきます。

人も同様に、ランニングからダッシュなどに移行すると足が接地している時間は短くなっていきます。

ここで問題となるのが、人が自分の移動感覚で馬の接地時間を考えてしまうことです。

人が地上にいるときの、これくらいの移動速度なら、これくらいの接地時間があるという感覚を、馬上でもそのままに持ってきてしまうことで馬の実際の動きとの不一致が生まれてしまいます。

馬上で地上と同じように周りの景色が流れていっても、人と馬では体の大きさが違うために接地時間は馬の方が長くなります。 その時間の長さ、を頭に入れて馬の動きを受容できるとよいと思います

 空間の要素

前へ前へ、という意識があると、踏み込む動きに意識が向かいがちです。

正反撞など観察していると、姿勢が後傾している原因の一つとして踏み込む動きに意識が集中しているというのがあるようです。

踏み込む→引き戻す→地面を離れる→踏み込むというサイクルを頭に入れて、前方に向かう(踏み込む)動きに加えて、後方に向かう(引き戻す)動きを受容できるとよいと思います。

二枚目の写真をみると意外と後ろに後肢があるな、と感じる方もいるのではないでしょうか。

馬の運動は全身で行われているため、引き戻し動作と脇腹の動きも連動してきます。脇腹とコンタクトしているふくらはぎも含めて引き戻す動きを受容できるとよいと思います。後肢が踏み込んだ後、引き戻す動きをする際に必要な空間を確保しましょう。


踏み込みをサイクルの一部として捉える話でした。
鞍上にある人の頭は前進し続けています。
その下では、車のタイヤが回転するのと違い、踏み込む→引き戻す→地面を離れる→踏み込むというサイクルを繰り返しながら前進しているということを頭に入れておきましょう。


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参考
メカニズムから理解する馬の動き、緑書房
新 馬の医学書、緑書房
IF HORSES COULD SPEAK, Trafalgar Square Books (DVD)
3D Horse Anatomy (スマートフォンアプリ等、日本語設定あり)
Don’t Shoot the Dog!: The New Art of Teaching and Training, Ringpress Books Ltd
ホースライディングマニュアル、アニマルメディア社

参考のリンク先
メカニズムから理解する馬の動き
新 馬の医学書
IF HORSES COULD SPEAK (Amazon)
3D Horse Anatomy
Don’t Shoot the Dog!: The New Art of Teaching and Training (Amazon)
Don’t Shoot the Dog!: The New Art of Teaching and Training (PDF)
ホースライディングマニュアル (品切れ,他サイト中古あり)

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