呼吸と移行の話~横隔膜と股関節の関係~

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僕がお世話になった馬術書のひとつに「センタード・ライディング」という本があります。普段あまり意識をしない呼吸ですが、4つの基本という章で、基本のひとつとして呼吸も入っています。その他の章でも、呼吸を意識するよう記述されていて、どうも重要そうです。今回は移行の際の呼吸の話に関してセンタード・ライディングで書かれていることと僕が考えていることを書きたいと思います。

 移行時に息を吐く?

下方移行でも上方移行でも、移行では馬が後肢を踏み込み背中を丸くもりあげること、それをヒトが許容することが大事です。センタード・ライディングの筆者は正しい移行の基本として「移行の時に息を吐くこと」と記述しています。これはなぜでしょうか。その理由は掘り下げて書いていませんが、呼吸をする際に働く横隔膜と、股関節の大腰筋という二つの筋肉の解剖学的な関係によると考えています。

 横隔膜と大腰筋の関係

呼吸をするさい、横隔膜という身体を隔てる大きな筋肉が働きます。息を吸う際に横隔膜は収縮し、吐く際に弛緩します。大腰筋は股関節の屈曲(足を上げる動きなど)に働く筋肉です。横隔膜と大腰筋は背中の腰椎という部分で筋連結をしており、横隔膜が固くなると大腰筋も緊張し、弛緩すれば大腰筋も弛緩するという関係にあります。(より詳しいことは次を参照:横隔膜のストレッチの方法は?

 馬の背中のもりあがりの許容

馬が移行で背中を丸くもりあげようとするときに、ヒトはそのもりあがりによって股関節が(受動的に)伸展されるのを許容しないといけません。そのためには、伸展の反対の屈曲の作用をもつ大腰筋の弛緩が必要です。先ほどの関係を考えるとその時横隔膜も弛緩しなければなりません。横隔膜が弛緩するのは息を吐くときなので、それが、センタード・ライディングの「移行の時に息を吐くこと」という記述につながると考えられるのです。

審判をしていると、A点から入場後の停止で後肢が踏み込まずに止まってしまうのをよく見ます。ヒトが息を吐くことで、それを改善できる場合もあるのではないかな、と思っています。「移行の時に馬が背中をもりあげるのを許容するために息を吐くこと」。これを意識するだけでも移行の質が変わる可能性があると思います。

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